韓国映画『息もできない』を観ました。実は、この映画のことはつい最近まで知らなかったのですが、TSUTAYA DISCASのサイトで、どのDVDをレンタルしようか迷っていた時にたまたま目についたのが、この『息もできない』で、サラッとレビューに目を通したところ、なかなかの高評価だったので、借りてみることにしたのです。
相手が誰であろうと遠慮も躊躇もせず、容赦のない暴力をふるう借金取りのチンピラ、サンフン(ヤン・イクチュン)。そんなサンフンが歩きながら吐いた唾が偶然通りかかった女子高生ヨニ(キム・コッピ)の制服のネクタイにかかってしまう。そのまま立ち去ろうとするサンフンを呼び止め、責任を取れと詰め寄るヨニ。サンフン相手にも怯むことなくつっかかってくるヨニに対し、とうとう我慢の限界に達したサンフンは、ヨニの顔面を思いっきり殴りつけ、気絶させてしまう・・・。
そんな最悪の出会いだったにも関わらず、サンフンとヨニはその後も度々会うようになる。互いに自分の境遇については何も語らなかったが、実はサンフンとヨニ、それぞれが家族との関係に深い問題を抱えていた・・・。
効果的な音楽で盛り上げる訳でもなく、ただ淡々とサンフンとヨニの日常が描かれています。でも、その日常というのが、思わず目を背けたくなるような辛い日々なのです。
サンフンは刑務所から出所してきた父親に対し、自分でもコントロール出来ないほど激しい憎悪を燃やしている。一方、ヨニは母親が亡くなったことを忘れて一日中テレビを観ている父親と、ヨニに暴言を吐いて脅しては金をせびる弟ヨンジェ(イ・ファン)と三人で貧しく、救いのない毎日を送っている。
ひょっとして、ヨニがサンフンに自分の苦しい境遇を打ち明けるのではないか。そして、サンフンがヨニを救い出すのではないか、などと安易なストーリー展開を予想してしまいましたが、そこは韓国映画。ハッピーエンドで万歳!とはいきませんでした。
ラブストーリーやコメディーと違って、シリアスな韓国映画というのは、大体とことん暗い。そして、バイオレンス満載。その暴力シーンがハリウッド映画などとは比べ物にならないくらい生々しいので、そういうのが苦手という人は、案外途中でこの映画を観るのをやめてしまうかもしれません。でも、せめて、サンフンとヨニが夜の漢江(ハンガン)で会うシーンまでは観て欲しい。あのシーンには、サンフンのどうしようもない悲しみが溢れているから。
そして、ラストシーン。あのラストシーンによって、映画を観終えた後も様々な想いが浮かぶのではないでしょうか。少なくとも私はそうでした。
サンフンを演じたヤン・イクチュンは、何と監督・脚本・主演の三役をこなしています。そのヤン・イクチュンはもちろん、ヨニ役のキム・コッピの演技がよかったです。それにサンフンの幼い甥っ子ヒョンインを演じた子役のキム・ヒスの演技もすごい。
ちなみに『息もできない』は、第84回キネマ旬報ベスト・テンの外国映画ベスト・テンで『インビクタス/負けざる者たち』(2位)、『第9地区』(3位)などをおさえて第1位を獲得しています☆
コメント